- 募集テーマ
- インテリア
- 募集期間
- 2024年8月1日(木)~11月29日(金)
- 応募総数
- 2,152点
詩部門:122点
短歌部門:691点
俳句部門:612点
川柳部門:727点
内 容
2024年度常設展にちなみ、詩歌作品の募集を行った〈インテリアと詩歌 作品募集〉の選考結果を発表いたします。
ご応募いただいた皆さま、まことにありがとうございました。
なお、小中学生の部は応募数僅少のため、最優秀賞のみの選考とさせていただきました。なにとぞご了承ください。
各部門の最優秀作品は、作者に直筆でお書きいただき、当館の特設コーナーに展示します。
選 者
詩
うるし山千尋(うるしやま・ちひろ/詩人)
短歌
田村 元(たむら・はじめ/歌人、『りとむ』編集委員)
俳句
小田島 渚(おだしま・なぎさ/俳人、『銀漢』『小熊座』同人)
川柳
徳道かづみ(とくみち・かづみ/川柳作家、『現代川柳』会員)
入選作品と選評 ※年齢・学校・学年は作品応募当時のもの。
詩部門 選者:うるし山千尋 先生
若狹さんの詩の中で繰り返される「かえるちゅういほう」は、ふしぎな魅力をもった言葉です。それだけは意味がわからないのに、何度もくり返し唱えることで、リズムが生まれてきます。言葉がイキイキしてきます。最後の「ちゅういほう」のところは、それまでの「ちゅういほう」とは違った「ちゅうい」になっていて、詩の眼でみることによって世界が広がっていくのがわかります。注意されているおとうさんの姿が浮かんできて面白いですね。 |
インテリアは基本的には道具である。そして道具が最も存在を露わにするのは、皮肉にもその道具性を失ったときだ。破損、廃棄、家の解体、使用者の死亡—— 。道具としての機能を失ったとき、表面化する記憶や思い出が感傷となり、詩を誘発する。今回優秀作品に選んだ作品は、その感傷をさらに一歩乗り越え、今ここにある「生」を感じさせてくれた作品たちだ。特に「わたしは椅子」は、作者が自ら椅子になることにより、人間の道具性を逆説的に否定し、「生」の力強さと謙虚さを感じさせてくれた。 |
短歌部門 選者:田村 元 先生
〈小中学生の部〉 |
最優秀 |
ヒィー君(山口県光市/13歳/山口大学教育学部附属光中学校2年) |
テスト前まずは掃除と模様替え年に五回の定番になる |
小中学生のみなさんにも、家の中でふだんから目にしているインテリアは身近なものだったのではないでしょうか。最優秀作品は、テストの前になるとつい、勉強を始める前に部屋の掃除とインテリアの模様替えを始めてしまうという歌です。私も同じような経験があり、どちらかというと勉強から目をそらしたい気持ちで片付けをしていました。部屋がきれいになると案外勉強もはかどりますので、とてもいい習慣だと思います。 |
〈一般の部〉 |
最優秀 |
崎本ミナト(埼玉県川口市/33歳) |
千円のカラーボックスかりそめに買ったつもりでもう二十年 |
優秀 |
馬場和義(大阪府吹田市/69歳) |
電話台黙って話を聞き続け今はひっそり花瓶を乗せる |
優秀 |
馬場鈴代(大阪府吹田市/69歳) |
賃貸で柱に傷は付けられず二段ベッドに成長記録 |
優秀 |
風天雷(栃木県宇都宮市/61歳) |
義母のため義父が造りし踏み台が義父亡き後も義母を助ける |
選考をしていて意外だったのは、時の経過を感じさせる作品が多いことでした。考えてみるとインテリアは消耗品に比べると耐用年数が長く、家族の歴史をじっと見つめているのですね。最優秀作品は、その場しのぎに買ったカラーボックスを、気づけば二十年も使っていたという内容で、多くの人の共感を呼びそうです。振り返ってみればあっという間の二十年。過ぎ去った時間を愛おしみつつ心に刻むのも、短歌の大切な役割です。 |
俳句部門 選者:小田島 渚 先生
〈小中学生の部〉 |
最優秀 |
冨田 輝(愛知県岡崎市/14歳/名古屋中学校3年) |
ハンモック森には森の風あつて |
生活の素直な想いがそのまま詩となった感性豊かな作品が並んだ。最優秀賞は〈ハンモック〉 の句。森の中のコテージでハンモックに揺られていたら、いつも住んでいる場所とは違う風を感じた。森には森らしい風が吹く。 私も私らしく存在していいという伸びやかな明るさがある。〈鮮やかな雫広がる花火かな みつあみ〉の切り絵のような捉え方、〈かべもゆかも白いお家のふゆりんご 若狹早〉の童話的世界、〈鍵盤の音聞いていた蚊はどこへ 浮浅紗〉の優しい関係性にも心惹かれた。 ※作者名は当館が補記 |
〈一般の部〉 |
最優秀 |
清水一澄(東京都足立区/20歳/明治大学3年) |
本棚に俺が詰まっている薄暑 |
優秀 |
山島美紀(三重県伊賀市/67歳) |
揺り椅子を熊に譲りて山の家 |
優秀 |
𠮷沢美香(宮城県仙台市/25歳) |
ブロッコリほどの弾力なるソファ |
優秀 |
戸舘大路(岩手県盛岡市/34歳) |
レースカーテン戦火 が透けてゐる |
家具を通して家族など人とのつながりを感じさせる句が多かった。最優秀賞は〈本棚〉の句。学習書や趣味の本、収集している物が並ぶ本棚はまさに自分そのもの。ぎっしり詰まった本棚はエネルギーに溢れている。〈揺り椅子〉の句は野生動物の出没被害多発を背景にしながら、人間が譲歩して熊と共存する姿がユーモラスに描かれる。〈ブロッコリ〉の句。ブロッコリーに座ったことはないのに丁度いいソファの弾力を思わせる。〈レースカーテン〉の句。日常のすぐ隣に戦争がある恐ろしさ。 |
川柳 選者:徳道かづみ 先生
〈小中学生の部〉 |
最優秀 |
高畑 優(大阪府大阪市/11歳/大阪市立四貫島小学校 5年) |
ふぞろいのルービックキューブ定位置に |
面がそろっていないルービックキューブがインテリアという視点がとても面白いです。カラフルなルービックキューブは、ふぞろいなほど個性的なアートとして、部屋のアクセントになりますね。定位置に置いてあるということは、ずっと手つかずのまま放置されているのでしょうか。時々は、そろえるチャレンジもしてみてください。 |
〈一般の部〉 |
最優秀 |
佐藤岳俊(岩手県奥州市/79歳) |
卓袱台に家族四人の傷がある |
優秀 |
伊藤聖子(神奈川県川崎市/52歳) |
私だけ笑う西日のインテリア |
優秀 |
月波与生(青森県大鰐町) |
うんうんとうなずく椅子と暮らしてる |
優秀 |
森尾広志(福岡県北九州市/63歳) |
カーテンを開けて本日生きてます |
卓袱台を囲む家族団らんは、いつの時代も幸せの光景です。しかしその笑顔の奥に、父母には父母の、子どもたちには子どもたちの「痛み」があったのではないでしょうか。家族に寄り添ってきた卓袱台だからこそ、知らずにその「傷」を刻んだのでしょう。人生の切なさを感じる一句です。
また、容赦ない西日を笑顔で受け入れる強さ、気のいい椅子を相棒とする生活の楽しさ、翻るカーテンに生きる実感を巧みに表現された句をそれぞれ優秀賞とさせていただきました。
たくさんのご応募ありがとうございました。 |