【結果発表】賢治に献ずる詩歌 作品募集

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〈「賢治に献ずる詩歌」作品募集〉の選考結果につきまして、以下のとおり発表いたします。
たくさんのご応募をいただき、まことにありがとうございました。
各部門の最優秀作品は、作者の直筆にて、当館の特設コーナーに展示します。

選 者

菊池唯子(きくち・ゆいこ/『歴程』同人、盛岡市在住)

短歌

山口明子(やまぐち・あきこ/『心の花』会員、滝沢市在住)

俳句

澤口航悠(さわぐち・こうゆう/『樹氷』編集長、盛岡市在住)

川柳

熊谷岳朗(くまがい・がくろう/いわて紫波川柳社 主幹、紫波町在住)

募集期間

2023年6月1日(木)~11月30日(木)

応募総数

1,558点(詩部門:174点、短歌部門:521点、俳句部門:476点、川柳部門:387点)

入選作品

※年齢・学校・学年は作品応募当時のもの。

〈小中学生の部〉
最優秀 宿沢献字(広島県広島市/13歳/広島市立安佐中学校1年)
「冬と農夫」(PDF 243KB)
優秀 東 美桜莉(広島県広島市/12歳/広島市立安佐中学校1年)
「正東風に愁いあり」(PDF 198KB)
優秀 稲江陽南(大阪府門真市/15歳/門真市立第七中学校3年)
「春昼と寒夜」(PDF 126KB)
〈一般の部〉
最優秀 繁泉祐幸(宮城県仙台市/67歳)
「修羅が呼ぶ」(PDF 228KB)
優秀 森内詩紋(岩手県遠野市/51歳)
「焼走りにて」(PDF 190KB)
優秀 柏葉公敬(岩手県花巻市/72歳)
「農学校通りの修羅」(PDF 225KB)
優秀 大窪純子(兵庫県神戸市/67歳)
「賢治紀行」(PDF 253KB)
詩部門 選評:菊池唯子 先生

〈小中学生の部〉

 『春と修羅』に目を向けるようになるのは高校生以上になって、賢治の語彙の専門性、比喩の独自さに向き合うエネルギーがたまってからと思っていた。だが、宿沢さんは賢治になってしまってMISTELのマクロ機能のように二重の光景を見る農夫を描き、東さんは春の「」の下で孤独に塵と化す自分を描いた。ただし、後者の一連三行、「匂いが覗かせている」という主述の「が」を「を」と訂正した。文のねじれが一般に通じるかどうかよく読み返して欲しい。稲江さんは「春と修羅」にある明暗の対比を感じ取っていた。詩は誰かに手渡すもの。その前の推敲が大切。

〈一般の部〉

 まずは、宮澤賢治作品の中でも難解と言われる詩集『春と修羅』に挑み、作品を書かれた皆さんに敬意を表したい。集中の「序」、「春と修羅」をモチーフとした作品、伝記的事実や、童話の世界を描いたものもあった。選は、その作品化の困難を承知の上で、詩の魅力を第一とした。賢治イコール修羅の枠を外し、仏教的宇宙空間に賢治をおいた「修羅が呼ぶ」、賢治が隣で苹果を食べているかのような「焼走りにて」は面白かった。入賞以外にもいい作品があったが、イメージの分裂、誤記など、もったいないと感じた。

短歌

〈小中学生の部〉
最優秀 安孫子将生(岩手県滝沢市/11歳/滝沢市立姥屋敷小学校6年)
妹は冬鳥になり見おろして天から賢治の旅を見まもる
優秀 石川姫花(岩手県滝沢市/15歳/滝沢市立姥屋敷中学校3年)
日が落ちて空にかがやく燐の火の燃えつづけるはよだかの星か
優秀 佐々木富雅(岩手県滝沢市/15歳/滝沢市立姥屋敷中学校3年)
見上げれば銀河鉄道走ってる銀河の空に星残しつつ
優秀 能登愛莉(岩手県花巻市/8歳/花巻市立花巻小学校3年)
けんじさんどうして本をつくろうとしたかというとさみしいからかな
〈一般の部〉
最優秀 風の旅人(福岡県志免町)
苦と楽が打ち寄せる岸さざ波の狭間に浮かぶ人の世の舟
優秀 鈴木久夫(岐阜県笠松町/70歳)
結晶と魂なりて乱反射北上川は光の帯に
優秀 村上たま子(東京都杉並区/40歳)
木犀の薫る中行く眠れぬ夜インクの空に月静かなり
優秀 だいちゃんZ!(大阪府堺市/48歳)
人生は銀河鉄道最初からなかったんだね確かな線路
短歌部門 選評:山口明子 先生

〈小中学生の部〉

 最優秀作品は、下の句から賢治に対する妹の愛情を感じました。賢治の妹を思う気持ち、妹の兄を思う気持ちがとても伝わってきます。
 次に優秀作品の三首について。「日が落ちて…」の歌は、燃えつづける「燐の火」から、「よだか」の生きる苦しみや、命の明滅を感じました。「見上げれば…」の歌は、下の句から美しい星空が浮かびました。「けんじさん…」の歌は、下の句の意外性に、はっとしました。ここまで感じ取る感性、素晴らしいです。

〈一般の部〉

 最優秀作品は、人間の心の修羅を、修羅の渚のように描き出し、最優秀作品にふさわしく思い、選出しました。
 次に優秀作品の三首について。賢治は「岩手山」の詩の中で、「乱反射」という言葉を用いましたが、「結晶と…」の歌では、「北上川」で用いて成功しています。「光の帯」が素晴らしいです。「木犀の…」の歌は、「インクの空」が効いています。「人生は…」の歌は、賢治の人生と重なる様な所に惹かれました。

 

俳句

〈小中学生の部〉
最優秀 該当作品なし
優秀 該当作品なし
〈一般の部〉
最優秀 白木澤妙順(岩手県大船渡市/77歳)
慟哭のはての笑みかも福寿草
優秀 兼平玲子(岩手県盛岡市/70歳)
停車場は農場の名や山笑ふ
優秀 野上 卓(東京都世田谷区/72歳)
鵲の橋に汽笛の響きたる
優秀 夏野清暁(愛媛県松山市/15歳/済美平成中等教育学校4年)
賢治の目に冬の星座の青からむ
俳句部門 選評:澤口航悠 先生

〈小中学生の部〉

 難しいテーマによくチャレンジしました。賢治の作品をたくさん読んでまた俳句を作ってください。

〈一般の部〉

  春の野山で光をためて真っ先に咲く福寿草の明るさに心も和み、修羅から脱皮できたのではないだろうか。木の芽が開き始めた小岩井農場への道をゆったりとした足取りで詩や童話の構想を練る幸せそうな賢治がいた。鵲が翼を連ねて作った橋を汽車が汽笛を鳴らして通るという。賢治の世界そのもの。寒さの中で冬の星座は青く輝いて見え、冷たくなった体の中に創作の炎を燃やす賢治がいた。

川柳

〈小中学生の部〉
最優秀 吉岡廉太朗(大阪府大阪市/14歳/大阪市立瑞光中学校2年)
賢治から生きる事への強さ知る
優秀 逸見涼太(大阪府大阪市/15歳/大阪市立蒲生中学校3年)
感情を無声慟哭妹に
〈一般の部〉
最優秀 横溝惺哉(宮城県仙台市/18歳/クラーク記念国際高等学校仙台キャンパス3年)
一瞬の明滅命の点と線
優秀 西東南北(大分県国東市/77歳)
逃げ水に取り憑かれてか影法師
優秀 岡田快維(愛媛県松山市/20歳)
春風を辿り街ゆく修羅として
川柳部門 選評:熊谷岳朗 先生

〈小中学生の部〉

 応募してくださる方がとても少なかったようですが、これは理解できるような気がしました。募集内容が、「賢治に献ずる詩歌」だけであれば広がりがもてたかもしれませんが、賢治作品の基軸とも言える『春と修羅』をモチーフとした作品となりますと、その一つの中に踏み込んでいかなければなりません。私にとっても、とても難しいと思いました。しかし、最優秀作品に頂いた句は、よくここまで掘り下げたものだと感心しました。

〈一般の部〉

 あらためて『春と修羅』に触れ、考えさせられることばかりでした。生きるということは、煩悩の中を這い、怒り、悲しみ、悩み、苦しみ、彷徨い続ける事なのでしょう。それは、自分自身の中に存在する二つの心が、そうさせているからだと申します。「現実と心象」、死ぬまで葛藤し続けるのでしょう。しかしそのこと自体は、最優秀作品が示すように、生きているという一瞬の中の出来事に過ぎないのかもしれません。

 

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