【結果発表】大震災と詩歌―あの日から、明日へ― 作品募集

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「<大震災と詩歌―あの日から、明日へ―> 作品募集」の選考結果につきまして、以下のとおり発表いたします。
たくさんのご応募をいただき、まことにありがとうございました。
各部門の最優秀作品は、作者の直筆にて、2階展示室入口に展示します。

選 者

清岳こう(きよたけ・こう/『とんてんかん』主宰/宮城県在住)

短歌

齋藤芳生(さいとう・よしき/『かりん』会員/福島県在住)

俳句

関 悦史(せき・えつし/『翻車魚』同人/茨城県在住)

川柳

柳清水広作(やなしみず・こうさく/久慈川柳社 代表/岩手県在住)

募集期間

2021年7月1日(木)~2022年1月31日(月)

応募総数

1,494点(詩部門:120点、短歌部門:420点、俳句部門:418点、川柳部門:536点)

入選作品

※年齢・学校・学年は作品応募当時のもの。

〈小中学生の部〉
最優秀 佐竹孝太郎(福島県会津若松市/14歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
「かみさま」(PDF 147KB)
優秀 菅野美菜実(福島県会津若松市/15歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
「此処」(PDF 161KB)
優秀 藤田佳音(福島県会津若松市/15歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
「十年前の君へ」(PDF 214KB)
優秀 ひびき(福島県会津若松市/15歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
「きんぎょ」(PDF 134KB)
〈一般の部〉
最優秀 佐藤栄喜(岩手県奥州市/84歳)
「アース」(PDF 190KB)
優秀 長根りんこ(青森県八戸市/70歳)
「春のページ」(PDF 159KB)
優秀 海上 弘(千葉県旭市/60歳)
「うみなり」(PDF 154KB)
優秀 吉岡幸一(福岡県福岡市/56歳)
「海も見つめている」(PDF 156KB)
詩部門 選評:清岳こう 先生

〈小中学生の部〉

「かみさま」。飾らない言葉で、人間を、大地を見守るかみさまのまなざしが温かく表現されています。いろいろと想像しながら読むと元気がわく作品です。「此処」。自然災害を地球、宇宙、億、万の時間というダイナミックな世界からとらえました。最後の二行に励まされます。「十年前の君へ」。あの時の恐怖を希望へとつなぐ、幼かった自分、またはみんなへの優しいメッセージです。「きんぎょ」。こわくてさみしかったのは人間だけではなかった、生き物すべてへと想いがふくらんだのは成長のしるしですね。

〈一般の部〉

「アース」。「儂」という単語に象徴される生命体からの言葉。それは人類の歴史、現代人の右往左往ぶりにも言及され、風格ある作品になりました。「春のページ」。平凡でも幸福だった日常が具体的な言葉で丁寧に辿られています。「活字はまだ濡れている」「本は微かに発熱する」魅力的なフレーズです。「うみなり」。たったひとつの願いが肉声を持って語られ、切実に伝わってきます。「海もみつめている」。男の人と海の関係が丁寧になぞられ、諦念を超えた感情が湧いてきます。ほかに、「浮きあがる前に」「三月十一日からのメッセージ」も印象深く心に残りました。

短歌

〈小中学生の部〉
最優秀 横道 玄(山口県光市/10歳/光市立光井小学校5年)
かくし味は小さな勇気とやさしさです生きてる地球へぼくの伝言
優秀 涼佳(福島県会津若松市/14歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
十年の月日が流れ消えていく毎日見てた君の横がお
優秀 水野結雅(愛知県名古屋市/14歳/名古屋市立守山中学校2年)
ドライカレーあっさりとした真昼間コンクリートにひびの残れる
優秀 桜木 唄(栃木県宇都宮市/14歳/宇都宮短期大学附属中学校2年)
ガタガタと安眠襲う魔人たち広がる波紋一つ二つと
〈一般の部〉
最優秀 髙田明洋(埼玉県春日部市/62歳)
黒き羅を纏いて蝶の還らまし白き波濤の海の原越え
優秀 葉村 直(大阪府豊中市/21歳)
黙祷の指のすき間を春風はただやわらかくただあたたかく
優秀 瀬戸内 光(山口県光市/62歳)
枝も幹も十年分ほど伸びました寺の銀杏のベーサルシュート
優秀 山影ちとせ(岩手県盛岡市/19歳)
換気扇あるいは窓の結露からにじむ幸せ今は無いもの
短歌部門 選評:齋藤芳生 先生

〈小中学生の部〉

地球が「生きてる」以上、私たちは「震災」と無関係に生きていくことはできない。しかしそこに「小さな勇気とやさしさ」があれば――。素直でありながら、人間の核心をついた一首である。「震災」を自分自身の言葉で表現することは、大人である私たちが考える以上に難しいのではないかと思う。しかし、寄せられたどの作品にも「震災」というテーマに真摯に向き合った様子が感じられ、選考をしながら私自身大いに励まされた。

〈一般の部〉

「蝶」が纏う、と詠われた「黒き羅」は喪服を想起させる。この「蝶」は当然、震災によって尊い命を奪われてしまったたくさんの人々の魂の象徴であろう。命の儚さと「海の原」の果てしなさ。「白き波濤」との色の対比も美しい。言葉にならない哀しみが、一首の歌として見事に昇華された一首である。この一首をはじめ、今回の選考にあたっては共感性と普遍性を特に重視した。優れた詩歌は、時代を超えて私たちの希望となるはずである。

 

俳句

〈小中学生の部〉
最優秀 関 美悠(埼玉県さいたま市/13歳/学校法人佐藤栄学園 栄東中学校1年)
そのときのみたことはない父の家
優秀 廣部小春(兵庫県姫路市/12歳/姫路市立香寺中学校1年)
雪の日にしあわせうばう恐怖心
優秀 渡邊陽菜(兵庫県姫路市/14歳/姫路市立香寺中学校2年)
こおりつくバケツをみると寒くなる
〈一般の部〉
最優秀 瀬戸内 光(山口県光市/62歳)
わだつみは君がおくつき石蕗の花
優秀 ぷーちゃん(大阪府大阪市/51歳)
眼裏に浮かぶ津波と寒椿
優秀 佐藤茂之(岩手県大船渡市/54歳)
春のなゐ吾の中で皆生きている
優秀 岡田とみ子(宮城県松島町/76歳)
山眠る視えぬ光を放ちては
俳句部門 選評:関 悦史 先生

〈小中学生の部〉

俳句というよりも、次の災害に備えようという防災標語になってしまった作品が多かった。大災害は大人の文筆家たちにも同じような言葉(惨状を見て「言葉を失った」等)を口にさせてしまう圧力を持っている。それを免れるのは簡単ではない。「そのときの」は一度も見たことがないまま被災してしまい、話としてだけ何度も語り伝えられた震災時の父の実家のイメージが、夢のように心に棲みつづける不思議な感触の句と受け取った。

〈一般の部〉

生きている間は身近な死者が次第に増え、それを抱え込む。ことに横死により無惨に縁の断ちきられた相手は、傷として胸に棲みつづける。「わだつみは」は「ツ」音の連続でなだらかに繋がれた重層性、「春のなゐ」は地震の都度呼び起こされる「皆」として、その傷に存在感を与えた。「山眠る」「眼裏に」は、今は鎮まっている自然の猛威を、声高になることなくかすかなおびえを以て描き、震災後の自然の見え方の変化に触れた。

川柳

〈小中学生の部〉
最優秀 るい(福島県喜多方市/15歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
震災も人のきずなは壊せない
優秀 板垣 快(福島県会津若松市/15歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
震災に対する意識常に持つ
優秀 冬虫夏草(福島県会津若松市/15歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
身に染みて自然の力思い知る
優秀 やまぐち(福島県会津若松市/14歳/福島県立会津学鳳中学校3年)
忘れない自分がみたこときいたこと
〈一般の部〉
最優秀 老舟(青森県八戸市/65歳)
歩き出す明日の風の吹く方へ
優秀 佐藤徳子(愛知県海部郡/57歳)
悲しみを包むのもまた海だった
優秀 近江菫花(滋賀県大津市/59歳)
十一年ひと区切りとはまだ言えず
優秀 まっちゃん(東京都足立区/58歳)
映像に消えぬトラウマ今もなお
川柳部門 選評:柳清水広作 先生

〈小中学生の部〉

小中学生のみなさんのほとんどは、ご家族や学校の先生方から伝えられたり教わったり、テレビや本などで知ったことを川柳にしてくれたと思います。それでも、実際に大震災を体験した大人たちに負けていないような作品がたくさんありました。
最優秀作品:震災を経験して、人間同士のつながりの強さと大切さを改めて痛感させられました。

〈一般の部〉

被災された方の句、被災地に寄り添う句、また、十一年経っても臨場感のある句等々、他のジャンルを超えた応募数に感謝いたします。テーマ所以(ゆえん)だとは思いますが、同想句、類想句、さらにスローガン的な作品が多かったことも申し添えます。
最優秀作品:未だに、不自由な生活を強いられている多くの方々への応援句として、プラス志向の句をいただきました。

 

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