| 著者 | 西村和子 | ||
|---|---|---|---|
| タイトル | 素秋 | ||
| 出版年月/出版社 | 2025年10月/朔出版 | 受賞回[年] | 41回[2026年] |
| 分野 | 俳句部門 | 分類 | 作品 |
[略歴]
一九四八年、神奈川県生まれ。六六年『慶大俳句』入会、清崎敏郎に師事。九六年、行方克巳と共に『知音』創刊、代表。句集『夏帽子』、『心音』、『椅子ひとつ』など。著書『虚子の京都』、『季語で読む源氏物語』、『季語で読む枕草子』、『季語で読む徒然草』、『俳句のすすめ』など。毎日俳壇選者。
[受賞のことば]
青春時代、子育て時代、夫の転勤に従って移り住んだ関西時代、息子達が巣立った後のもとの二人時代、夫を見送ったのちの余生。この歳月を共にしたのは俳句だけであることに気づきました。
ごく平凡な人生の折々を刻みつけた地味な作品集が認められて、大きな手応えをいただきました。これからも命ある限り、俳句は私に連れ添ってくれるにちがいありません。俳句によって恵まれたもの、救われたことに感謝して、これからもこの道を歩んでゆこうと思います。ありがとうございました。
[作品抄出]
大海は珠を孕めり養花天
駅員の申し送りに燕の巣
ひきがへる内なる闇をひきかむり
陋巷をけろりと過ぎし梅雨の雷
落葉搔く音のみ谷戸を下り来る
伊吹山雪の拳骨固めたり
語り寄るごと紅梅に佇める
公魚や外輪山と光りあふ
遠望も叶はざりけり大文字
枝豆を色よく茹でて一人とは
駒返る草やくるぶしふくらはぎ
初桜ひとり歩きに如くは無し
三椏の小鈴はづませ又一羽
子へものを書けば遺書めく夜の秋
立秋の机上拭へば傷無数
屠蘇注ぐや顔立ちやがて面構へ
背表紙は本の背骨よ子どもの日
田植済むみちの奥まで水の国
五月闇顔無き人とすれ違ふ
梅雨深し足音もなく追ひ抜かれ
根の国の声洩れきたり梅雨入穴
初蟬の鬼哭啾々たる今年
見付けたり避暑の極みの粗衣粗食
愕然と秋至りけり関八州
火を起こし水音覚まし大旦
子らもその子らもをのこご雑煮椀
読初や古格尊き明治の句
裏木戸を封じ木香薔薇盛り
白和へに酪の香ほのか柿の秋
しづかなること林の如き人の冬
年頭一句即ち時の流れ初む
買初の一帖二管三十葉
初陣に似たるあはれや初桜
利休梅腹帯ここに賜りし
蝙蝠や見てはいけない橋の裏
半分は明日へ取り置く胡瓜揉
深追ひも顧みもせず秋の蝶
(掲載作選出・正木ゆう子)
