著者 | 成田千空 | ||
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タイトル | 忘年 | ||
出版年月/出版社 | 2000年3月/花神社 | 受賞回[年] | 16回[2001年] |
分野 | 俳句部門 | 分類 | 作品 |
[略歴]
一九二一年三月三十一日青森市生まれ。四六年、青森俳句会「暖鳥」と中村草田男の「萬緑」創刊に参加。五三年第一回萬緑賞。八九年『人日』で俳人協会賞。九八年『白光』で蛇笏賞。句集に『地霊』『天門』『成田千空句集』など。現在、萬緑選者。俳人協会名誉会員。
[受賞のことば]
句集『忘年』は私の第五句集で、平成七年から十一年までの作品から、四〇〇句を自選するのに精いっぱいであった。十年に蛇笏賞を受賞してから、発想は自由に、表現は自然体にとこころがけたが、納得できる作品が少なかった。又、師である中村草田男の世界からしだいに隔たってきた思いがある。しかし師の求めたものは今も私は求めているつもりで、その道はまだ遠い。今年傘寿を迎えたが、まだやれそうな気がする。この度、選考委員の皆さんから句作の励みをいただいて、心から感謝している。
正岡子規曰く。〝俳句は文学〟である。
[作品抄出]
束の間の初日いつぱい紙の上
白障子妻より吾は早起きに
海鼠あり津軽の辛き地酒あり
裏口になほ残雪の頑固もの
有難や一夜を里の大布団
生誕の二月や妻に舞ふ鷗
梅咲いて日の座山の座たしかなり
唱ふごと喋る少女等うめさくら
雨雲の東に晴るる桜かな
やぶ椿小暗く赤くわが上野
田一枚消えて蛙の国も消ゆ
炎えかすむ多摩の横山師の寝墓
大橋を来て馥郁と林檎村
母を見に山を見にゆく小春かな
足るを知る顔してふくら雀かな
ねむる子に飛驒ひぐらしの藁の家
合歓はみな睫毛をひらき山の国
悼
かりがねや帰らぬ旅の五千石
大雪をぶちまけてまだ降る気かな
字を書いてをり寒暁のしづけさに
白無垢の白鳥とゐて無為の時
眼の見えぬ母に玲瓏囀る木
蛇笏賞受賞
われとわが千の空から花吹雪
夏草の中に父立ち遠ざかる
一汁は鰯のつみれ郷の家
新米を大きく握る農婦かな
春の日や花園となる棺の中
南無機山雲よりしだれ桜かな
(掲載作選出・阿部完市)