著者 | 金子兜太 | ||
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タイトル | 両神 | ||
出版年月/出版社 | 1995年12月/立風書房 | 受賞回[年] | 11回[1996年] |
分野 | 俳句部門 | 分類 | 作品 |
[略歴]
一九一九年九月二三日、埼玉県生れ。東大卒。七四年日本銀行定年退職。現代俳句協会会長。「海程」主宰。八八年紫綬褒章受章。句集『少年』『皆之』。
[受賞のことば]
句集『両神』は、七十歳を跨いでの九年間のものをまとめたのだが、その間、いつになく繁忙だったこともあって、連句の独吟さながらに、内面の付け味を追って、次次に産むような気持でつくっていた。したがって、一句の仕上りというよりは、その時期の私らしい有り態が滲み出ていれば十分、という心意でいた。いま、それをおもしろしとしてくれる人がいたのだ、と自分勝手に決めて、喜び且つ感謝している。
[作品抄出]
赤馬と道化師がいて夏は来ぬ
満月去り朝が無言で覗いていた
梅雨の家老女を赤松が照らす
飴のような曲馬の少女夏の初め
少年二人と榠樝六個は偶然なり
楊州は驢馬多き街僧ら瘦せて
卯の花に曽良が剃りたて頭かな
裸か子に若布はりつく外の浜
夏野なり夕方は月が出るだけ ときに耕馬を空に映して大地あり
トレド寒し小麦畑を白馬走り
白木蓮の北京むらさきの上海
麦秋を水牛と人顔寄せて
泉守る蛇いて東一華咲く
飯食えば蛇来て穴に入りにけり
雪の弥彦山芭蕉越え来し峠も雪
鸛鶴来て夏なり塩の湖遠白
雛罌粟に老羊飼仁王立ち
月明の尾根越えて来し寝酒かな
両神山の肩打つ時雨お降りなり
両神山は補陀落初日沈むところ
語り継ぐ白狼のことわれら老いて
青春が晩年の子規芥子坊主
森の村闘鶏場にしんと人
森の村昼寝のまわり家鴨と米
凧売りの凧の黄色の渚かな
大石田斑雪葉山に言霊最上川
夏を溢れて鳥の羽根乗せ最上川
秋爽の聖アツシジの街に鋭声
夏の牛ときに秩父の尾根をゆきし