茨木和生『真鳥』(2015年8月/角川文化振興財団)

著者 茨木和生
タイトル 真鳥
出版年月/出版社 2015年8月/角川文化振興財団 受賞回[年] 31回[2016年]
分野 俳句 分類 作品

[略歴]
  一九三九年奈良生まれ。右城暮石・山口誓子に師事。『運河』主宰。『晨』『紫薇』同人。『西の季語物語』で俳人協会評論賞、句集『往馬』で俳人協会賞、句集『薬喰』で俳句四季大賞受賞。公益社団法人俳人協会常務理事。日本文藝家協会会員。大阪俳人クラブ会長。奈良県俳句協会会長。

[受賞のことば]
   一ツ橋綜合財団から、私の句集『真鳥』が第31回詩歌文学館賞に決まったという連絡を受けて驚いた。妻にいうと、「びっくりぽんやねぇ」と笑い、「授賞式には二人で出るんだよ」というと、八年ほど前に一緒に行った日本現代詩歌文学館のことを思い出していたようだ。歌人では前登志夫さんが受賞されているというと、つい先日、前さんの奥さんと電話で長話をしたという妻は「前さんと同じ賞とはすごいじゃない」と改めて驚いたようだった。この賞を私に与えて下さった選考委員の先生方、詩歌文学館の方々に厚くお礼申し上げます。
 
[作品抄出]

法隆寺裏の流れに濁り鮒

竹植うる声美しき夜明かな

猿が屋根走りてゐたり栗の花

大峯に立つ屈強の雲の峰

地震にて落ちし大岩日の盛

奥降りに濁れる流れ守武忌

屈強の男が揃ひ棕櫚を剝ぐ

神酒提げて山に入り行く年の暮

猿除けに犬を繫げる雪間かな

春山に雲を見てゐて動かれず

落花せず闇に大揺れしてをれど

梅落す前に落梅拾ひけり

坂道のなかなか尽きず栗の花

蟻抓み損ね損ねて稚遊ぶ

山寺の奥の一間の葭障子

潮速く流れてしづか日の盛

山越えの島の旧道石蕗の花

年迎ふ本尊盗まれたる寺も

大阪の日差穏やか靑々忌

航海を終へて来てをり残り福

畦焼いてゐる人に声掛けに行く

低き山々も雲湧く雛祭

その樹下に鹿立つ夜の山桜

日受けよき家も空き家山桜

蛇も迂闊われも迂闊や蛇を踏む

出土せし地蔵祀れる清水かな

春本の二つ三つも曝書せり

秋の滝茶室に正座して仰ぐ

山荘の順路の中に秋の滝

年の暮採餌に真鳥飛び来たり

(掲載作選出・大峯あきら)