鷹羽狩行『十五峯』(2007年7月/ふらんす堂)

著者 鷹羽狩行
タイトル 十五峯
出版年月/出版社 2007年7月/ふらんす堂 受賞回[年] 23回[2008年]
分野 俳句 分類 作品

[略歴]
  一九三〇年山形県生まれ。四六年に俳句を始め、山口誓子・秋元不死男に師事。七八年「狩」創刊、主宰。「毎日俳壇」選者。(社)俳人協会会長。句集『誕生』(俳人協会賞)『平遠』(芸術選奨文部大臣新人賞)『十三星』『翼灯集』(毎日芸術賞)ほか、著書多数。

[受賞のことば]
  俳句の道に入ってから六十年になります。初めはひたすら句作し、一句できて喜び、それが褒められて喜んでおりました。今ではそういうことよりも、自然と一体となって句作する喜びのほうが大きくなりました。
  その自然が、地球温暖化によってさまざまな影響を受けています。日本語の中で最も美しい、季語という自然の恩恵を受けてきた俳人として、自然の保護に何か役立つことはないかと考えているところです。
  受賞にあたり、選考委員の方々に心より御礼申し上げます。

 
[作品抄出]

初鶏や山々さそひあひて覚め

立ち止まりては考へて嫁が君

老病死愛恋選句始かな

電線のあるうちは来よつばくらめ

沸騰の湯気折り曲げて青嵐

さいのめの花びらめきて新豆腐

考へるかたちに二つ夜の胡桃

今年また紋見せに来し鶲かな

走り根が幹にかしづく神無月

串焼きの葱の熱さよ三の酉

初夢をさしさはりなきところまで

電柱は列を正せり田植終へ

あぐら居に尾骨ありたる円座かな

目も鼻も化粧のなかや祭稚児

三伏や弱火を知らぬ中華鍋

やはらかくとらはれの身や秋の蚊帳

てにをはを舌頭千転くつわ虫

立冬や低めに締めて夜の帯

凍星やきびしかりしは誓子選

残月は誰の頭蓋ぞ春寒き

バレンタインデー俎に貝の砂

笹舟は一枚仕立て春の水

闇割つて五体投地の修二会僧

貝がらは縞の柄着て雛祭

人界をうかがふごとく春の雷

春昼や魔法瓶にもはしひとつ

ふるさとや靡き揃ひて水草生ふ

遠目には白馬のさまの花吹雪

湾内に鯨きてゐるこどもの日

若竹ののりを越えたる高さかな

鵜篝がうしろを通る薪能

明け方の空の固さよ板鳴子

立ち上がり牡の鹿となる月下かな

減る減ると見せ狐火の増えゆけり

決断は丹田にありちやんちやんこ

(掲載作選出・山田弘子)