深見けん二『日月』(2005年2月/ふらんす堂)

著者 深見けん二
タイトル 日月
出版年月/出版社 2005年2月/ふらんす堂 受賞回[年] 21回[2006年]
分野 俳句 分類 作品

[略歴]
  一九二二年福島県高玉鉱山生れ。四一年高浜虚子、四二年山口青邨に師事。『夏草』『ホトトギス』『珊』『屋根』同人。九一年『花鳥来』(季刊)創刊主宰。句集『父子唱和』『花鳥来』(俳人協会賞)『水影』など。他に『虚子の天地』『四季を詠む』

[受賞の言葉]
  句集『日月』は、第六句集で、私の七十代後半の句をまとめたものです。
  高浜虚子・山口青邨両師に師事し、私なりに、花鳥諷詠・客観写生の道を一途に歩いて来たつもりです。しかしそれが出来たのも、門下のよい連衆や、仲間があって句会を共にすることが出来、又多くの方の支えがあったからです。
  北上は、青邨先生にゆかり深い所で、何度も訪れています。その文学館で賞がいただけるのは何とも嬉しい限りです。
  選考委員の皆さんに、心から感謝いたしております。

 
[作品抄出]

雨音や畳の上のきりぎりす

除夜篝焚く万端のととのひし

野遊の弁当赤き紐ほどく

枝々に重さ加はり夕桜

北上の闇繽粉と火取虫

屑金魚などと云はれて愛さるる

湧き立ちて静けさつのる泉かな

舞ひのぼる蝶の影さし水澄める

ひとめぐりしても一人や鴨の池

雲を出て冬日しばらく走りたる

今日に如く冬麗はなし友来り

我が生の余光ばかりや初暦

花を見る少し老いたる心もて

真ん中の棒となりつつ滝落つる

朝顔のみずの一碧張りにけり

コスモスに来るのろの蝶しこの蝶

俳諧の他力を信じ親鸞忌

丹田にのりし全身寒稽古

霜柱崩れて花をなすところ

陽炎や青邨の下駄虚子の下駄

睡蓮の近くの紅はつまびらか

光の矢折々飛ばし泉湧く

糸瓜忌や虚子に聞きたる子規のこと

どこそことなしに一気や彼岸花

川千鳥らしやと見ればひるがへり

自らに問ふこと多し冬泉

先生は大きなお方龍の玉

老いてなほ小さき立志梅白し

日陰より眺め日向の春の水

海見えて太平洋やつばくらめ

傾ける枝に傾き朴の花

灯のついて簾の中のたたずまひ

奥までも幹に日当る枯木立

(掲載作選出・和田悟朗)